器用貧乏からマルチ・ポテンシャライトへ。コンプレックスを強みに変えたfumieさんの生き方

今まで自分が「人と違う」と感じていたことが、実はひとつの特性であり、強みにもなる。

今回お話を聞かせていただいた、新しい働き方LAB(※)研究員第1期生のfumieさんは、10月末に行われた中間報告会で総勢300名近い研究生の中から「新しく始まったで賞」を受賞しました。

fumieさんは研究開始後、選んだ研究テーマが自分に合っていないことに気づき、一度は実験を中断します。しかし新たなテーマを探すため積極的に行動を続け、「マルチ・ポテンシャライト」という言葉に出会いました。

その後のfumieさんの生き方に大きな影響を及ぼし、新しい研究テーマにもなった「マルチ・ポテンシャライト」とは一体何でしょうか?笑顔の素敵なfumieさんに、半年間の研究員生活についてたっぷりとお話をうかがいました。

※新しい働き方LABとは?
ランサーズが発起した、フリーランスの全国共創コミュニティ。2021年5月から「自分なりの新しい働き方」を実験する研究員制度がスタート。

■□■□ fumieさんのプロフィール ■□■□

服飾の専門学校を卒業後、服飾系商社や広告エンタメ業界で営業、生産管理、事務経理、バイヤーの仕事を経験したのち、フリーランスとして独立。現在は「マルチ・ポテンシャライト」を軸に、マクラメ作家、Web関連の講師サポート業、ヨガの研究など幅広く活動中。note:https://note.com/emifu

研究活動を通して見つけた「マルチ・ポテンシャライト」という強み

── 「新しく始まったで賞」の受賞おめでとうございます!まずはfumieさんの研究テーマについて教えていただけますか?

2021年6月の研究開始時に設定したテーマは、「人物を象徴する『パーソナルロゴ』を持つ事で、コミュニケーションや人間関係に新しい変化は起きるのか?」でした。

Webサイトを見るとき、ロゴやアイコンって一番に目がいくところですよね。コロナ禍で対面での自己紹介が減ったいま、その人を象徴するロゴがあれば、ネット上で「自分はこんなことをしています」といった発信もしやすくなるのではないかと考えたことがきっかけでした。

ところが、いざロゴをつくろうと思っても全くアイディアが浮かばず、手が止まってしまう日々が続いたんです。研究を始めてから1ヶ月後の7月には、実験が完全にストップしてしまいました。

── そこで「もう研究をやめよう」とはならなかったのでしょうか?

やめようとは思いませんでした。不安はありましたが、研究員制度には楽しんで参加していたので、テーマを見失ってしまった時期もそこまで「しんどい」という感じではなかったんです。ほかの研究員の方々が毎日Twitterやnoteでちゃんと発信しているのに、自分はできていないもどかしさを感じてはいましたが……。

でも逆に周りで走っている人がいたから、「ちょっと木陰でお弁当を食べながら休み過ぎちゃったな。そろそろ行かなきゃ!」と自分自身に発破をかけることができたんだと思います。

それから、研究期間中は月に一度定例会があるのですが、そのときに運営の方が「活動する人、少し休憩する人、これから始めようとする人、いろんな人がいて良いんです。実験だから、上手くいっても、いかなくても良い」と仰っていて。そんなふうに肯定してくれる方がいたことも、大きかったと思います。

── 他の研究員や運営の方々の存在が、研究員を続けていく支えになったんですね。次のテーマはその後すぐに見つかりましたか?

研究を始めてすぐに頓挫してしまったので、再テーマ決めには慎重になっていました。

まずは自分がこれまでに経験してきたことや、いま学んでいることを紙に書き出して、「私にできることはなんだろう」「どんなテーマなら研究活動を最後まで走りきれるだろうか」と考えました。でも、一人だとなかなか答えが出なくて。

そんなときに研究員同士の交流の場として、夏祭りイベントがオンラインで開催されたんです。そこでランサーズが主催するスキルアップ講座の1つ、「ランサーズブートキャンプ・ビギナーコース」が紹介されていました。

「何かテーマを見つける手がかりになるといいな」と考え参加を決めたのですが、ここで得たものが大きかったです。ブートキャンプでの学びが、新しい研究テーマをもう一度真剣に考えるきっかけになりました。

── ランサーズブートキャンプが転機になったんですね。

ブートキャンプのプログラムの1つに、セルフブランディングを学ぶ機会があり、そこであらためて自分が経験してきたことの棚卸しをして、自分の強みを言語化できるようになったんです。

その結果、「自分がすでに持っているもの」に目を向けられるようになりました。

── なるほど。それが新しいテーマにもつながったのでしょうか? 

そうなんです。9月に新しい研究テーマ、「『マルチ・ポテンシャライト』の生き方を追求することで、フリーランス収入を獲得することは出来るのか」を決めました。

これまで、様々な仕事をしてきたことや多趣味であることは、経験値を高め自分の自信にもなっていると感じていました。ただ一方で、知人から「きみは本当に器用貧乏だよね」と言われることもあり、1つのことを続けていないことが悪いことのように見られている現実に、悲しくなることもありました。

ブートキャンプで自分の棚卸をしたことをきっかけに、同じような悩みを持っている人は他にもいるのかなと思って、ネットで「器用貧乏」と検索してみたんです。そこで「マルチ・ポテンシャライト」を紹介するTEDの動を見つけ衝撃を受けました。

── 「マルチ・ポテンシャライト」とは何でしょうか?

簡単に言うと「多くのことに興味関心をもち、創造を追求する人のこと」で、日本語に訳すと「多能性を持つ人」です。

私の中で器用貧乏ってすごく悪いイメージしかなかったんですよね。小さな頃から親族や学校の先生に、「ちゃんと1つのことをやり遂げなさい」とか「そんなにあっちもこっちもやってどうするの」って叱られてきたので、「自分はちょっと普通と違うところがあるのかな」と思って生きてきたところがあって。

だからこの動画を観たとき、次々と興味の対象が移り変わる人のことを、すごく肯定的な言葉を使って説明してくれている姿に感激してしまいました。「これ、私のことだ!」って(笑)。

いろんなことに興味があって、1つのことが続かないっていうのがずっと欠点だと思って生きてきたけど、そんなことないんだなと。むしろ、異なるものを組み合わせることで可能性が広がることを知りました。

初めて観たときは、「世の中に発信してくれてありがとう」という気持ちでいっぱいでした。

マクラメ作家×IT×ヨガ

──  現在のfumieさんのお仕事や活動について教えていただけますか?

いまメインで行っているのは、マクラメ作家、Web講師サポート業、ヨガの3つです。

──  それぞれ詳しく聞かせてもらってもいいですか?

1つ目は、マクラメ作家としての活動です。手で糸を編み込みながら模様を描く、「マクラメ編み」の技法を使った作品づくりをしています。

コロナが流行する前は、マクラメ編みアクセサリーの制作講座やワークショップを開いていましたが、現在はオーダー制作がメインです。

これまでアジア、ヨーロッパ、中南米など、世界各国の鉱山に足を運びました。マクラメ制作では、現地の職人の方々と交流しながら、自分の目で見て厳選した素材を仕入れ、手から手へつながる物語を作品に織り込むことを大切にしています。

2つ目は、Web関連の講師サポート業です。コロナ禍の休職中に学んだWebの教育機関で、講師のサポートをしています。

生徒の方にアドバイスをする際は、今まで経験してきた業界の知識を生かせることもあります。この仕事を通して、人に何かを伝えることの面白さに気づくことができました。

3つ目は、ヨガアライアンスの資格を習得するための勉強です。古代インドから伝わる智慧や、哲学・人体解剖学・アーユルヴェーダなどの知識を学ぶことで、心身ともに健康に生きることの重要性や、人が生きていく上で本当に大切にするべきことを再認識しています。

実は昔、会社員として働いていたときに、うつ病と診断されて休職していた時期があって。病院で薬をもらって飲んで寝て過ごす本当に自己流の療養で、根本的な解決もできないままだったので、また働けるようになるまでにちょっと時間がかかってしまいました。

その後ヨガと出会い、日常的にヨガを始めたら、体調が劇的に良くなったんです。

──  そうだったんですね。ヨガの動きが、心身に良い影響を及ぼしたのでしょうか?

体を動かすことももちろん効果的ですが、私にとっては考え方の根本を変えることが一番の良薬でした。成長とともに身についた考え方の癖や、押し込めてきた感情を正しく出せるようにする術を、ヨガを通じて学ぶことができたんです。インドでは、ヨガは小さい頃から教育の中で学ぶ「人間学」なんですよね。

ヨガを始めてからは、悩みの解決方法や、自分に合った道を選ぶ方法が分かるようになりました。いまはその体験を生かして、悩みを抱えている人をサポートすることができたらと考えています。

ちなみに、ヨガの語源の「yuj(ユジ)」は「繋がる」「結ぶ」という意味で、糸を結んでマクラメを作っている私にとっては、とても縁の深い言葉でもあります。

自分の人生を豊かにする働き方を選んでもいい

── 研究員制度に参加する前と後で、働くことに対する意識の変化はありましたか?

収入的にはまだ希望の額に達していないのでこれから工夫が必要ですが、何より、働くことが楽しくていいんだと思うようになりました。好きなことや自分が自然と楽しめることも仕事になるんだと。

今までは、仕事は社会や誰かが決めたルールの中で頑張るものだと思い込んでいましたが、自分の人生を豊かにする働き方を選んでもいいんだと気づきました。

── その変化は、今後の人生にも大きな影響がありそうですね。fumieさんにとっての「自分の人生を豊かにする働き方」について、もう少し詳しくお聞きしてもいいですか?

いま考えていることは、2つあります。

1つは「マルチ・ポテンシャライト」を広める側になることです。「器用貧乏じゃないよ。そういうネガティブなワードじゃなくてこっちを使おうよ」と発信することで、私みたいに「あ、そんな考え方もできるんだ」って思う人が増えると嬉しいですね。

TEDの動画でもバイオリン奏者であり心理セラピストでもあるボブ・チャイルズ博士が紹介されていましたが、そういう異なるジャンルを組み合わせて活躍する生き方が、これからスタンダードになっていくんじゃないかなと思っています。それを後押しするお手伝いをしていきたいです。

もう1つは、「Webデザイン×ヨガ」で新しい働き方をすることです。

いまの時代って、オンラインでヨガを習うことができるんですよね。ヨガの先生をするときは、オンライン講座ではWebデザインの知識を生かし、よりわかりやすく伝えられるような工夫をしていきたいと思っています。

── 研究期間が終わってからも挑戦は続きますね!最後に、研究員制度に興味のある方へメッセージをお願いします。

新しい働き方LABの研究員制度は、新しい働き方をしたいと考えている人はもちろん、いま何をやっていいかわからない人も、挑戦することで何かしら得るものがある貴重な場です。

自分だけではやり遂げられないことも、一緒に頑張る仲間がいることで可能になりますし、そんな仲間と出会えることが何よりの財産になるんじゃないかと感じています。

今まできっかけがなくて踏み出せなかった人こそ、楽しんで飛び込んでみてほしいです!

《ライター・赤錆 菜々》

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