じぶんらしい働き方って、なんだろうーー
『新しい働き方LAB』にはその捉えどころのないキャリアの問いに挑み、自らのキャリアを切り拓いてきたメンバー達がいます。東京キャンパスのコミュニティマネージャーを務める滝沢 紘子(たきざわ ひろこ)、通称「もんちゃん」もその一人。
企業の人事総務からWebライターを経由し、昨年はライバーへ。
「レールを外れたくない」から「やりたいことだけしたい」を経由して、「真面目に変になる」へ。
読んだら思わず好きになっちゃうかもしれない、滝沢紘子さんのRosen-zuです。
目次
求人広告ディレクター×コミュニティマネージャー
求人広告ディレクター滝沢紘子
ーーもんちゃんが普段している”求人広告ディレクター”とはどんな仕事ですか?
求職サイトに掲載する求人記事を作る仕事です。
具体的な工程としては、取材・写真撮影や同行カメラマンへのディレクション・記事のレイアウト作成・広告主の担当さんとの打ち合わせ・デザイナーへの発注・ライティングーーと幅広く行います。
これらを全て終えて期日までに記事を納品したら、「ようやく仕事1件完了!」といったところです。
ーーどういう形で依頼を受けているのですか?
私は制作会社と業務委託契約をしていて、その1社から依頼をもらって仕事をしています。
求人は企業活動がある限り生まれてくるので、仕事はたくさんあります。でも、記事を作るには印刷したら本になるんじゃないかと思うほど膨大な”求人広告作成のルール“を守らないといけなくて、これに対応できる人がなかなかいないんです。
だから、業界は常に人手不足。ありがたいことに私のもとにも途切れずに仕事が入ってきています。
ーー本並のレギュレーション!全部頭に入ってるんですか?
未だにわからないことありますよ。『記者ハンドブック』みたいに逐一チェックして確認してます。それでもよくわからず、サイト運営会社の方に問い合わせすることだってちょくちょくあります。
でも、私としてはその対応は苦ではないです。どちらかというと、調整能力に難があるのでクライアントの方やカメラマン・デザイナーさんとの日程調整の方に苦労しています。そういうの、苦手なので(笑)。
新しい働き方LABのもんちゃん
ーー新しい働き方LABではどんなことをしていますか?
東京キャンパスのコミュニティマネージャー兼、『無駄団』*の御頭を務めています。
*『新しい働き方LAB』の無駄を無邪気に思い切り楽しむスペシャルハッピー集団
この『無駄団』から派生して、LABの研究員制度では第3期指定企画として『”無駄”を極めたアナログゲームをつくったら狙わずとも売れちゃうのか?』を立ち上げました。
ーー研究員制度では『仕事・稼ぐ』『地方の課題解決』『最新テクノロジー』などすごく意義のありそうな企画が多い中、異彩を放ってますよね。
この企画は完全に私の個人的な熱意から始まった企画ですからね(笑)。
私って、もともと思考が「こうあるべき」にすぐ向いちゃうところがあって、ちゃんとできてない自分に苦しさを感じがちだったんです。でも、LABの「自分のやりたいことをやろうよ」という価値観に出会って、「”must”じゃなくて”want”で生きていいんだ」「もっとやりたいことの方を向いていいんだ」って思えるようになって……。
今では「”must”からの解放」が私のテーマ。もっと自分も他の人も”want”を追い求められるように『無駄団』やこの企画で「やりたいことやって生きていこうぜ、ウェーイ!」って旗を振ってます。
ーープロジェクトはどうですか?
とはいいつつ、「やっぱり指定企画だからちゃんとやらなきゃ」って、最初は結構悩んでました。
でも、他のコミュマネのみんなから「無駄団を指定企画にしろって言っている時点でちゃんとしろなんて思われてないから安心しろ。」「気にせずやりたいことをそのままやっとけ!」って言われて……(笑)。
だから、今は安心して変なプロジェクトを真面目にできています!
ーー「やりたい」を追求できてるっていいですね。
お金のことを考えず、やりたいことだけやって生きて行けたらいいなって、私はよく思います。でも、この考えはフリーランスみんな共通ってわけではないんですよね。
フリーランス仲間にこの考えを話すと「『やりたいことだけやって生きていく』って思わなきゃいけないの?」「『笑顔でお金を稼ぐことを考える』って悪いことなの?」と返ってくることもありました。「何を求めるか」「どうありたいか」はそれぞれ違って、それぞれ自由なんですよね。
考え方が違うと居心地が悪くなることってあると思うんです。だけど、LABはそうしたいろんな価値観をそれぞれが出しながらも共存できる場所になってきている。だからいろんな企画があるし、その中で私の企画もできている。そんな感じです。
もんちゃんの働き方路線図
あんな苦しい就活はしたくない!
ーーここからは、「フリーランス、やってみようかな」と迷っている人の参考になるような話を聞いていきたいなと思っています。もんちゃんはどんな経緯で、どんな仕事からフリーランスを始めたんですか?
ちょっと長くなりますけど、いいですか(笑)?
東京のシステムエンジニアサービス会社で総務・人事をしていて、副業としてWebライターを始めたのがフリーランスのはじまりです。でも、積極的な理由で会社を辞めてフリーランスになりたかったわけじゃないんですよ。
私は両親が公務員だったこともあって、学生の頃から「人生のレールを外れたら死ぬ」ぐらいに思い込んでいました。でも卒業後、うっかりレールを踏み外してしまったんです。薄給での生活、プライベートの環境も厳しい。すぐに追い込まれてしまった私は「フツーのOLになりたい」と願うようになりました。
でも、求職活動をすると人材紹介会社の人から「フツーにスーツ着て働けると思うな」と厳しい言葉も浴びせられたりして。そんな中、なんとか社員として採用してもらえたのがそのSES事業会社だったんです。
数年間は安定して働かせてもらっていたんですけど、2015年頃にプライベートの事情で数年間限定で地元の北海道に戻る必要が出てきてしまいました。
そしたら「行って戻って……2回もあんなしんどい求職活動するのはイヤだ!」っていう気持ちがとにかく強くなっちゃって。それで、就活しなくていい可能性を模索してランサーズに登録したーーという経緯です。
ーーせっかくなれたフツーのOL、続けたいとは思わなかったんですか?
とにかくイヤなことから逃げたかったんです(笑)。
でも、どこかに「自分を試したい、チャレンジしたい」という気持ちもあったと思います。ちょうどその頃ふとしたことで、自分の人生の絶頂期が”生徒会で学校祭の実行委員長をしていた17歳の私”だと気がついてしまった時期だったので。
「あのときのお姉ちゃん、覚醒してたよね。キラキラしてた」と、妹が今でも話すぐらい当時の私は輝いていて、私自身も17歳の自分にずっと憧れを抱いていました。
でも、それからの私は劣化するばかり。かといって、このままこの先も、あの時の自分を超えることができないままなのは、嫌。
そんな思いも手伝って始めた副業のWebライターは、思いのほか自分に合っていて、4ヶ月ほどで「これなら専業でも行ける!」という手応えが得られました。そこで思い切って退職して、現在いるフリーランスの世界に身を投じることにしたんです。
「ヤダヤダ逃げたい」から「これはできる」へ
ーーフリーランスになりたての頃はどんな仕事をしていましたか?
ちょうどキュレーションメディア、いわゆる「まとめサイト」が流行していた時期だったので、文字単価0.5円〜1円のまとめ記事を大量に書いていました。ジャンルとしてはヘルスケア、映画、料理、ライフハック系です。たとえば『ベトナム料理・バインミーを作ってみよう♪』とか。
そのうち、ある制作依頼会社がお得意様になってくださり、継続的に依頼を受けてひたすら記事を書くようになりました。その頃は月100本ぐらい書いてた気がします。
ーー月100本はすごい。週25本ですよ。
ビックリしますよね。毎日夜中2時ぐらいまで目を血走らせながら書いてました。同じメディアで書いている人達も「週に20本行けます!」っていう猛者ばかりで、このあたりはホントにパワープレーでした。
ーーしんどくはなかったんですか?
夜中、叫んでましたよ(笑)。ずっとキーボードを打ち続けてると肩が爆発しそうな感覚になってきて、もう座ってもいられなくなるんです。それでも手を動かし続けなきゃ終わらない。だから「もうヤダヤダヤダー!逃げたーい!痛いー!」って、泣きながらやってました(笑)。
でも、案件が終わっても「別の案件があるんだけどいけますか?」とディレクターさんが新しい仕事を紹介してくださるので、とにかく生活していかなきゃいけない私にとってはすごくありがたくもありました。
当時は人事総務時代のスキルも残したくて秘書や人事・総務業務も併行して受けていたので、そういう面でも重宝がってもらい、ライティング以外の仕事もいろいろさせてもらいました。
ーー同じディレクターの人から継続して依頼が来たんですか?
いや、同じ制作会社のいろんな社員さんから「〇〇さんから紹介を受けたんですけど、この仕事ってお願いできますか?」と代わる代わる声をかけてもらいましたね。
そのうちに求人広告大手の某サイトの案件をもらいました。これが今の仕事につながる転機です。
たまたまそのサイトのレギュレーションが業界で「最も厳しい」とされるようなところだったので「あそこで書いたんだったらうちでも行けるよ」と声がかかり、あれよあれよといろんな求人広告サイトで記事を書くようになっていきました。
ーー1つの案件をきっかけに、専門性が確立されていったわけですね。そこから、現在の求人広告ディレクターにつながっていった。
そうですね、「これは自分にとって”できる”仕事だな」と思っていたら依頼が続いたので、求人広告業務に専念することにしました。求人サイトの運営会社に直接応募もして、あるメディアでは4年ぐらい継続して担当させてもらって経験を積みました。大変なことはありますけど、この仕事1本で生計を立てられるようになって本当にありがたいです。
“must”と”want”の間の葛藤
ーー新しい働き方LABのコミュニティにはどうやって出会ったのですか?
新しい働き方FES2019の運営ボランティア募集メールがランサーズから届いて、「面白そう!」と反応したのがきっかけです。ボランティアでは超個性的な5人のメンバーと出会って、もうめちゃくちゃ楽しかったです。
ーーそこからどうしてコミュニティマネージャーに?
このときの気の合う仲間達とFESが終わったあとも定期的に集まっていて、それをTwitterで発信していたんです。それをLABの所長・いっちー(市川瑛子)が見つけてくれて、「東京キャンパスのコミュニティマネージャーしない?」とDMで誘ってくれたんです。
ちょうどLABでイベントをたくさん開催していきたいと思っていた時期だったみたいで、「イベントをやってくれそうな人」として私の名前が挙がったんだそうです。
ーーコミュニティマネージャーになって、どうでしたか?
生活や仕事に追われてできていなかった”自分のやりたいこと”をやれる場所と居場所ができて、それはもう嬉しかったです!
一方で、挫折も経験しました。新しい働き方FES2021では「実行委員長やりますぅー!ウェーーイ!!」とノリノリで始めたものの、自分のやりたいことを成立させながらスポンサーやお客さんのメリットを考えるバランスがあまりにも難しくて、打ちひしがれました。
でも、そんな挫折のおかげで成長もしました。「できないことは人を頼る」ということができるようになったんです。「自分で全部ちゃんとやらなきゃ」って思ってたけど、自分の苦手なこと・できないことを受け容れて、誰かにお願いできるようになって、すごく楽になりました。
ーー人を頼るって難しいですよね。それができるようになった要因はどこにあったんでしょう。
これは他のコミュニティマネージャーやLABのみんなのおかげで、私が「ありのままの自分」を受け容れられるようになったからだと思います。
いつも私の中には「こうあるべきだ」っていう”must”に囚われている無意識の私がいます。それが苦しいから意識的に「やりたい」という”want”を追い求めようとする私もいます。どちらも私なんですけど、LABに入ったばかりの頃は”must”から解放されたいあまりに「ちゃんとできない私を許さない私」の存在をないことにして、”もともとちゃんとしてない、変わっている私”のふりをしていたんです。
だから、「もんちゃんって変わってるけど、真面目だよね」って言われることにコンプレックスを感じてました。本当の私を見透かされているような気がしたから。
でも、みんなが「もんちゃんはもんちゃんでいいよ。だってもんちゃんはもんちゃんだから。」っていつも言ってくれるから、「私は私でいいんだ」「真面目なのも私、できないのも私。できない部分は誰かに頼ればいいんだ」と考えられるようになったんです。
▲コミュニティの中で、”真面目に変”な自然体のもんちゃんに。
もんちゃんの”じぶんらしい”働き方とは
ーーここまで自分がたどってきた路線図を振り返ってみて、もんちゃんが見つけた”じぶんらしい”働き方って、どんなものだと思いますか?
真面目にやろうとする私がいて、やりたいことだけを追求したい私もいます。だから、それが混じり合った“真面目に変になろうとする”のが、私らしさかな。名付けるなら、”プロ自由人”。
今はそういう自分に価値を生み出して仕事にする「自分コンテンツ化」を模索中です。
ーー自分コンテンツ化とは?
自分のやりたいことを真面目にやって、自分自身をコンテンツにしてお金を生み出す働き方です。
新しい働き方FES2021でライブ発信者という存在を知ったのがきっかけで、去年はライバーになりました。ライバー事務所・321に所属しながら手探りで一年間配信を続けてみたんです。けど、全然うまく行きませんでした(笑)。
でも、これに対してはそんなに悲観してなくて、アウトプットの方法が自分に合ってなかったんだと解釈してます。だから今はグッズ制作に手を出していて、他にもTikTok、ブログ、動画なんかも進出を画策中なんです。
ーーもんちゃんらしい軸が定まって、前向きな模索を続けている。そんな感じがしますね。
はい。先を見通して仕事ができず、自転車操業感のあるフリーランスな自分が嫌なときもあったんですけど、私は私でいいし、こんな働き方も良いかなって今は思えてますよ。
最近気がついたんです、私は私が大好きだって。
ーーもんちゃんって、やっぱり素敵です。これからも応援してます!
(取材・執筆:北原 泰幸、イラスト:えの季)