【松崎邦彦さんについて】
・研究テーマ:
「未経験の業務に少しずつ挑戦することで、自分の可能性をどこまで広げることができるか?」
・研究員制度中間報告受賞「最初の一歩を踏み出したでしょう」
受賞理由:「やっぱり続けられる人ってすごい!思うように進まなかった中でも、誰かに相談しようとしたこと、そしてこうして中間発表に応募してくださったことは本当に素晴らしいことだと思いました」(審査員コメント)
・プロフィール:
大学時代にフリーランスでライター業開始。不景気などもあり、大学卒業後職を失う。その後、体調不良もあり、20代の大半を引きこもり生活。30歳を過ぎて、少しでも社会との接点を持つため仕事を再開。年齢も40歳近くなり、転職も厳しいと考えていた時『新しい働き方LAB』の研究員制度を知り、「運命を感じ」応募。研究員活動中退職するも2021年11から就職と同時に『週末フリーランスライター』として活動。シナリオライター目指して勉強中。
愛称・くにさん
詳しくは➡https://note.com/knhk_/n/n3f57f1cb04db
松崎さんは、精神的な病を抱えながらも研究員制度を利用し新しいスキルの習得にチャレンジ。コロナの影響で本業が多忙になり研究員の活動をスタートしたのが8月に入ってからと当初より大幅に遅れましたが、最終的に希望していた職種での転職にも成功。
本記事は松崎さんの苦悩しながらも前に進もうとする姿勢、そして、コミュニケーションの大切さにスポットを当てました。
目次
まさかの受賞の知らせから、認めてくれたことへの感謝へ
ーー「最初の一歩を踏み出したでしょう」受賞、おめでとうございます。受賞の連絡をもらった時、どんなことを考えましたか?
最初、担当の方が間違って連絡をくれたと思いました(笑)「こんなんでも賞にしてくれるんだ」と驚きの方が強かったです。久しぶりに認めてもらえたという感じで、うれしいという感情はすぐには出てこなかったです。
ーーそもそも中間報告に応募しようとした思われた動機は?
6月からの開始当初は会社員として働きながら実験をやっていましたが、途中で体調を崩して会社を辞めて時間ができたんです。そこで中間報告だけでもやろうかと。
それと、運営の榮田さんからかけて頂いた言葉ですね。前半から全く何の活動もしてなくて、「こんなんでも続けていいんですか?」と相談をしたんです。そこで榮田さんから「途中からでもできる範囲でいいので、やってもらって結構です」というお言葉を頂いたのでじゃあやろうかなと思いました。
ーー前半は全く活動をしていなかったということですが、当初の計画はどんなものだったのでしょうか?
当初は会社員をしながら色んな分野に少しずつ挑戦をしていこうと思っていました。自分の可能性を広げるため、また今の会社の仕事にも活かせるかもしれないと思ったからです。
ただその頃コロナの影響で会社の業務が忙しくなりました。社員の業務量が極端に増加し、残業がずっと続いていたんです。そこで体調を崩してしまい、家に帰って寝るだけの生活になりました。スタートダッシュで思い切り転んだという感じです。
Slack(スラック・研究員の連絡ツール)で通知が来るたびに、やらなければいけないなぁとは思ってました。ただ、途中から焦らなくなりました。それぐらい疲れていたんです。
ーーそんな中、運営の姫野さんも親身に相談に乗ってくれたということですが、今後の活動に影響は与えたんでしょうか?
一回目に「まだ挑戦していいですか」と榮田さんに相談したのと、姫野さんに相談したことは間違いなく影響はあったと思います。会社を辞めて一人暮らしをしていると誰とも会わなかったりします。体調があまり優れない中、文字だけでも交流できることはすごく力になります。あの時の僕を本当に支えてくれました。
ーー運営されている方々からの温かい言葉が松崎さんの心に響いたということでしょうか?
そうですね。温かいお言葉も頂きましたし、やはり経験が豊富なので「こんな考え方もある」「こんな働き方もある」と自分一人では思いつかない捉え方みたいなものがSlackでのやり取りでわかったので、自分の考えに凝り固まらず活動できたと思います。
様々な働き方を模索する中で出会った「新しい働き方LAB」
ーー「私の新しい働き方実験」の告知を初めて見た時の気持ちを聞かせていただけますか。
その当時会社員でしたが、思い通りの働き方ではなかったので、様々な働き方をインターネット上で調べ始めていたんです。(その頃からランサーズのプロフィールを少しずつ見直し始める)
そんな時に「新しい働き方LAB」で第1期の研究員制度が始まるというのを目にして、自分にぴったりだと思いました。「すごいことをやろうとかじゃなくてもいいよ」と書かれていてハードルが低かったのがすごく助かりました。たまたま見つけましたが、自分にぴったりだったというのが印象的です。
ーー研究テーマとして未経験分野(シナリオ、プログラミング、デザイン)の3つに取り組まれていますが、すぐに分野は決まったんでしょうか?
シナリオとプログラミングはすぐに思いつきました。デザインについては、未経験分野でもいいからちょっとずつでもやろうというのが研究員のテーマだったので、軽いノリで入れました。デザインというよりはイラスト、アニメが昔から好きで、絵は下手ですが、できたら素敵だなと漠然と考えました。
ーー最終報告書で未経験分野に取り組んだ時間を棒グラフで表現されてますね。プログラミングの比率が高いようですが、興味が湧いて取り込む時間が増えたということでしょうか。
単に没入できた、趣味みたいになったという感じです。うまくいかないこともありますが、なんでうまくいかないのかを考えるのも好きでした。仕事にできればいいですが、まだそこまで考えてないです。
※測定結果(期間8月~10月)
ーーお仕事について伺います。松崎さんは、「取材ライターブートキャンプ」を受講されてましたが、今月から転職された会社はライターとして採用されたと伺っています。今後はライター業をメインにお仕事をされていかれるのでしょうか?
何がメインということは考えてないですね。本来なら一本軸があってその周りに副業なりがあるのかもしれないですが、全部同じレベルで考えたいというのはあります。シナリオ一本でいければ、それが一番いいですが、シナリオライターはかなりリスクが高いので、現実的にはライターと趣味程度でやっているプログラミングでしょうか。
現在の会社の仕事は求人広告を作ることがメインで、本来やりたいこととは違っています。企業向けというよりはもっと人に向かって取材したり、イベントなどの取材をしたりと、この両方をやっていけたらいいのかなという感じです。
ーーそうすると、書くことをメイン(軸)に仕事をしていきたいということでしょうか?
そうだと思います。コールセンターなどで仕事をしてきたので“言葉”にはずっと触れてきました。言葉一つで、お客様が喜ぶこともあれば、逆に怒ることもあります。言葉というものに関心があったのは間違いないので、これからも関われたらと思っています。
ーー今後は引き続きランサーズでライティングの提案などもされていかれますか?
本来なら平日の空いた時間に提案して、週末に作業しようと考えていましたが、転職したばかりで疲労も溜まってきています。しばらくは新しい会社での生活習慣を確立させてからでもいいのかなと。あまり焦るとまた体調を崩しかねないですし。当面の目標は収益につながらなくても「私はこういう人間です」ということが確立できる環境を作っていくことです。
ーー好きな仕事につくこと自体、難しいことだと思います。松崎さんの場合比較的すぐにライター職で転職ができたのはすごいですね。
運がよかったとしか言いようがないですね。実は姫野さん(運営担当)に相談してたんです。体調回復が最優先だったのでストレスのかからない仕事に就いてフリーランスの方に力を入れるか、生活優先で会社に就職して少しずつ仕事をやるか、どっちがいいかということをです。結局、前者は全部落ちて、後者の方になったということです。やりたい仕事に近い分野だけど、無理かなと思いながら応募のボタンを押したのが今の会社です。
ーー運命的なものを感じますね。
そんな感じはしますね。ちゃんと相談に乗ってくれる人がいるという、ちょっとした心の拠り所ができたので、体調がいい時に(応募の)ボタンを押しながら活動できたと思います。生活習慣を整えて2022年からちょっとずつお金につながることもできたらと思っています。
※松崎さんは前の会社を退職する時に体調を崩し、休業手当などの保証制度を調べることができない状況になり、失業保険を受給せず生活のためすぐに働かざるをえなかったそうです。
ーー最終報告書を拝見すると、一区切りついたように読み取れました。今後、研究テーマを続けていかれますか?
たしかに区切りはつきましたが、続けていくと思います。今もツイッターでプログラミングのことを続けて発信しています。シナリオスクールは休学中ですが、自分が学びやすいコースを調べ直してコースを変えるなり、環境を整えていきたいと考えています。デザインは合わないということがわかったので継続するかは悩んでいます。
何事もチャレンジしてみることが大事
ーー松崎さんのnoteの記事の中に「トンネル」という見出しを見かけました。トンネルの中間地点みたいな表現だったと思いますが、その例えがとても印象的でした。今の状況はトンネルのどの辺でしょうか?チャレンジしたことによって、トンネルは一旦抜けだしたという感じでしょうか?
まだトンネルの中です。正直メンタルの部分で今も病院に通っているのでトンネルから抜けたかと言われれば抜けてはいないです。高速道路でトンネルを抜けてちょっと進むとまたトンネル、というところがありますね。
最初の会社を辞めたところまでの真っ暗なトンネルはいったん抜けて、また違うトンネルに入って、今もバリバリやれますという体調ではないので、まだトンネルの中にはいます。でも、トンネルの中の明かりはいっぱいついてる感じです。
その明かりは新しい働き方LABのSlackのコミュニティだったり、ネット上のいろんなイベントを通して知り合った方だったりです。明かりがトンネルの中にぽつぽつあって、以前より前に進みやすくなったという感じです。
ーーもし、研究員に選ばれてなかったら今の生活や仕事観、転職活動に大きな違いはあったと思われますか?
100%違っていたと思います。コロナで仕事が多忙になって体調を崩すまでは一緒だと思いますが、おそらく転職じゃなくて休職手当になっていたと思います。ランサーズで提案して仕事をしようとかプログラミングしようとか全く思わなかったと思います。
ーーまさに新しい働き方LABの「何事もチャレンジしてみるのが大事だよ。失敗してもいいから」を実行することで、100%自分を変えられたということですね。わずか半年で素晴らしいことだと思います。
そういわれると嬉しいです。取材ライターブートキャンプの取材相手の方から「チャレンジしないと面白くないよ」と言われた時、確かにそうだと腑に落ちました。何事もチャレンジすることは大事だという考えを身に付けることができたし、このような取材も企画して下さったり。前半体調が崩れた時、何もしてなくても全然いいよって言って下さったり、本当に感謝しかないです。
新しい働き方LABには無数の蜘蛛の糸が垂れ下がっている
ーーすでに最終報告書も出されましたが、今のお気持ちと松崎さんにとって新しい働き方LABとはどんな存在でしょうか?
私にとって新しい働き方LABは、芥川龍之介の蜘蛛の糸に出てくる、天国から地獄へ垂れている糸みたいな感じです。カンダタは地獄から天国へ行くためにその糸を登っていきますが、その後からついてくる悪党を蹴落としてしまったので、途中で糸が切れてしまい、また地獄に落ちてしまいます。
働き方LABの場合は、チャンスがあればどんどん糸を垂らしてくれて、挑戦できる世界に引っ張り上げてくれる、そんな気がします。少しでも上を向いてさえいれば糸があって、少しずつでもつかんで行けば、引き上げてくれるようなそんな感じがします。
ーーその糸の一つが運営の榮田さんや、姫野さんの言葉だったりということでしょうか?
そうですね。あと他の研究員の方の報告書とかTwitterのつぶやきなどです。他の方もいろんなことで悩んでいて、そのつぶやきを見ることで一人じゃないと思ったことも含まれます。芥川龍之介の蜘蛛の糸では糸は一本しかなかったけど、新しい働き方LABの糸は一本ではないということです。ものすごい数の糸があると思います。
ーー松崎さん、本日はありがとうございました!
新しい働き方LABの研究員制度は各自設定したテーマを研究するだけではなく、研究員同士でサポートが必要な人にはいつでも手を差し伸べてくれる仕組みになっています。松崎さんは計画通りに研究を進められない中、思い切って相談をすることで道が開けました。
研究員のコミュニティを利用することで前に進めた、これはまさに新しい働き方LABが目指す共創コミュニティのプロトタイプになるのではないでしょうか。
《ライター・前原 恵美子》